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今も「現金は王様」か

クレジット投資に関する9つの疑問点 | Q1

今も「現金は王様」か

2023年は堅調な債券相場を予想する見方が優勢でしたが、金利の上昇を受けて、債券市場への資金流入は限定的にとどまりました。その一方で、予想に反して現金保有が支配的となり、信用リスクや金利リスク無しに4~5%のリターンが見込まれるMMF(マネー・マーケット・ファンド)や短期国債には、記録的な規模の資金が流入しました。

2024年に入って、債券市場は米国経済がソフトランディングに成功する兆候によって下支えされています。投資資金はリターンを後追いして動くことが一般的であり、投資家が資金を現金からクレジットに移す動きが確認されるようになりました。このトレンドは、極めて重要な問題を提起しています:今も「Cash is King(現金は王様)」でしょうか、それともクレジットがより魅力的な代替となり得るのでしょうか。


投資適格およびBB格のクレジットはリターン向上の可能性を提供

第1に、投資適格およびBB格のクレジットは、とりわけ中央銀行による利上げの終了とその先の利下げ開始が見込まれる環境において、現金対比で魅力的な利回り向上の機会を提供します。また同時に、マネー・マーケット投資のリターン低下に直結する将来の利下げの影響から、投資家を守ることにもなります。信用力の高いクレジットの領域においては、投資家は金利リスクとスプレッド・リスクを抑制しつつ、現金よりも高い利回り水準を1年後まで確定できるため、リターンの見通しは短期年限を中心に一段と魅力を増しています。

利回りが4%を超えるMMFや短期国債は、現金の待機先として魅力が高いと認識されてきましたが、中央銀行が金融緩和に軸足を移そうとする段階では最良の投資先にならないことを、歴史が証明しています。

FRBによる最後の利上げ後の期間における、短期社債のパフォーマンスをマネー・マーケット投資や長期の総合債券インデックスと比較すると、興味深い傾向が浮かび上がります。以下のグラフで示したように、さまざまな投資の時間軸(保有期間)において、短期社債はマネー・マーケット投資を平均300bpほどアウトパフォームしています。また、長期債券(米国総合債券インデックス)の方がリターンは大きいものの、金利リスクも高いため、金利のボラティリティが高止まりした場合の影響が大きくなります。

短期社債は歴史的に現金をアウトパフォーム

短期社債は歴史的に現金をアウトパフォーム

出所: ロベコ、ブルームバーグ。2023年9月時点。

景気後退の環境に強い投資適格クレジット

第2に、投資適格およびBB格の企業は、景気後退局面においても良好な業績を上げることが期待されます。景気後退入りの確率は市場に織り込まれているよりも高く、市場の見方は過度に楽観的であるとロベコは考えています。歴史が証明しているように、ほとんどの場合、中央銀行による利上げサイクルは景気後退を招きます。直近の例外は1990年代にさかのぼります。しかしながら、経済成長率が小幅なマイナスにとどまる景気後退の環境においても、投資適格およびクロスオーバー(BB格)のクレジットは、マネー・マーケット投資をアウトパフォームすることが期待されます。

クレジット市場には、景気後退局面において脆弱性が高まる領域も存在しますが、投資適格およびBB格の企業は、緩やかなマイナス成長の環境においても好調さを維持すると予想されます。これらの企業は負債を保守的な水準に抑制しているために、景気後退が収益性に与える影響や金利上昇の影響を克服することが可能です。また、長期負債比率が総じて高いことから、上昇した金利水準でリファイナンスを余儀なくされる短期的なリスクもありません。

リスク分散の促進

第3に、現金から投資適格やクロスオーバーのクレジットに資金を移すことによって、発行体リスクの分散を進めることが可能です。一般にマネー・マーケット投資においては、保有する発行体やカウンターパーティーが少数のみに集中するため、信用力が高いとは言っても、少数の発行体に過大なエクスポージャーを抱えてしまうおそれがあります。

信用力の高い投資適格およびBB格のクレジットに投資することによって、発行体の分散を促進することが可能になります。例えば、ロベコが運用するグローバル・クレジット短期年限戦略では、グローバル投資適格クレジット市場において130以上の企業に投資しています。また、パッシブ型のクレジット投資では、信用力が低くデフォルト・リスクが高い企業へのエクスポージャーが生じるおそれがあるため、パッシブ運用は推奨していません。クレジット投資の本質は、アクティブ運用とボトムアップ型のファンダメンタルズ分析によって、敗け組を避けることにあります。