ロベコでは、クレジット投資家の眼から見て、長期的な企業のビジネス状況に財務上重要な影響を及ぼす可能性のある、6つのサステナビリティ上の主要課題を特定しました。純粋な財務データにこのような情報を統合することで、より的確な投資判断を行うことができます。
6つの課題とは、エネルギー利用と温室効果ガス排出、水管理、健康と安全、地域社会との関係、贈収賄と腐敗、そしてコーポレートガバナンスです。それぞれを検証し、クレジット投資にどのような関連性があるのか、また企業経営陣に対して、それらリスクをどのように低減または分散するよう期待しているかをご説明します。
1. エネルギー利用と温室効果ガス排出
エネルギー利用と温室効果ガス排出はクレジット投資家にとって非常に重要な情報です。というのも、二酸化炭素排出原単位の業界平均と比較した各企業の数値が、その企業の全般的な業務効率とエネルギー効率、ひいては利益率の指標になるからです。さらに、エネルギー生産事業者は、天然ガス排出を含む規制の対象となっています。例えば米国では、地方または州レベルの排出規制制度により、企業はエネルギー利用と温室効果ガス排出に配慮することが義務付けられています。
ロベコでは、エネルギー消費原単位と温室効果ガス排出から生じるリスク全体を、企業がどの程度回避、削減、緩和できるのかに注目しています。そこで主要ファクターとなるのは、企業の全体的な環境管理体制と、温室効果ガス排出に対する具体的な取り組みです。ロベコではそれらの情報を、企業レポートやカーボン・ディスクロ―ジャー・プロジェクト(CDP)の質問票への回答から収集しています。
2. 水管理
水消費原単位は、企業全体の業務効率とエネルギー効率の指標であり、ひいては企業の営業コストベースの指標となります。さらに、水源へのアクセスについて、企業は規制や協定に従う義務があります。規制の変更や、水源へのアクセスの代替需要はコストを上昇させます。また、排水処理分野においては、特に北米の非在来型陸上エネルギー生産事業者は、新たな規制リスクの高まり、および環境への影響と誘発地震への懸念から生じる廃水圧入井に係るコスト上昇、といった課題に直面しています。
クレジット投資家としては、排水処理方法、および水不足地帯での水消費や操業など、企業固有の情報を収集します。水から生じるリスク全体を、企業がどの程度回避、削減、緩和できるのかに注目しています。そこで主要ファクターとなるのは、企業の全体的な環境管理体制と、水管理に対する具体的な取り組みです。水の消費削減や再利用をはじめとする水の効率的利用など、効率性向上に着目した適切な水管理プログラムは、企業のコストを削減し、水の希少リスクや排水問題を低減することにつながります。また許認可や規制に対する高いコンプライアンスの実績も考慮します。
3. 健康と安全
ロベコでは、職場の健康と安全性や労働環境データを、操業能力の優劣を図る代替的指標として利用します。そのため、職場の健康と安全に関する実績やその情報開示を分析しています。具体的には、死亡率や負傷率を見る他、プロセス安全(Process Safety Event)についてはますます重視するようになっています。格納施設からの放出事故などによる環境への影響に関する情報開示を求め、リスクが高い操業環境下にある資産の割合や、企業のリスク管理能力を分析しています。
ロベコでは、企業がどのように従業員や業務委託先の健康と安全を管理しているかに注目しています。経営陣に対しては、同業他社に劣る場合は改善に取り組み、死亡や傷害が発生した場合は個別事案毎に入念に調査分析し、安全軽視の企業体質から事故が連続で起こっていると見られる場合はその問題解決に当たることを求めます。
4. 地域社会との関係
企業は地域社会と良好な関係を築き風評リスクを避けることが必要です。例としては、地域社会関係を業務管理システムに組み入れることや、国家レベルのステークホルダー参画プログラムなどが挙げられます。企業に対しては、地域社会関係に関する課題の明確な開示や、企業全体として、また個別事例において、そうした課題にどのように対応しているかの開示を求めます。
5. 贈収賄と腐敗
ロベコでは、エネルギー・セクターにおける腐敗リスクをより詳細に把握するため、ロベコSAMの国別サステナビリティ・ランキングやその他の情報源を利用し、腐敗度合いの高い国に対する各エネルギー企業のエクスポージャーをチェックします。また、より綿密な分析のため、公表された生産量データとトランスペアレンシー・インターナショナル腐敗認識指数(TICPI)を組み合わせ、個別の石油・ガス企業の「生産量加重TICPIスコア」を算出します。これらのデータにより、企業がどのように一般的な腐敗リスクの分散を図っているかを把握し、固有のリスクへのエクスポージャーを確認しています。
6. コーポレートガバナンス
エネルギー・セクターのコーポレートガバナンスの状況を理解するため、企業の保有状況や、政府その他の経営に影響を及ぼす可能性のある株主の存在を分析します。取締役会の質も重要な要素です。例えば、取締役のメンバーに独立性はあるか、多様性が確保されているか、適切な能力を備えているか、といった点です。役員報酬は、クレジット投資家を含む投資家の利益に即したものである必要があります。
クレジット投資家としては、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)の原則に則った、高水準のコーポレートガバナンスの実践を企業に望んでいます。
結論
エネルギー・セクターでは、新たな炭化水素資源の発見と開発や、操業効率の改善のため、新技術を導入する流れが急速に進展しています。同時にこのセクターは、気候変動関連を含む様々な規制変更がもたらす大きな課題に直面しています。ロベコでは、このような新たな動きが企業に与える影響をモニターするため、ESGの観点を取り入れ、より豊富な情報を適切に反映した投資判断を目指しています。
重要事項
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