2023年に新たに設定するテーマは、強制労働の問題、公正な移行(Just Transition)の推進(2050年までの炭素排出量ネットゼロ移行に付随する社会的コストへの対応)、税の透明性の3つとなります。
この3つのテーマは、通常のエンゲージメント期間である3年にわたり実施する予定です。これに加え、気候変動と生物多様性という2つの広範なテーマを、常設テーマとして設定します。これは、ロベコの投資におけるこれら課題の長期的な重要性と、地球温暖化および生物多様性喪失に取り組む決意を反映するものです。
毎年、最も高い関心を寄せるテーマについてお客様およびロベコの運用チームと緊密に協議し、エンゲージメント・テーマを選択します。エンゲージメントの成功は企業のサステナビリティ改善、ひいては長期的な投資対象としての魅力度向上につながることが、学術研究で明らかになっています。
貧困の罠
現代版奴隷制のテーマは、低賃金と知られる業界において生活賃金の引き上げを目指すという、これまでの取り組みを引き継ぐものです。こうした業界では、貧困の罠の作用により、労働者は危険を伴いうる環境での労働を強いられています。また、コロナ後の世界における労働慣行の改善や、紛争地域のサプライチェーンにおける人権侵害の摘発といったエンゲージメント・テーマにもつながるものです。
このテーマでは、主にアジア太平洋地域の一般消費財、生活必需品、テクノロジー、ヘルスケアをはじめとする、強制労働が懸念される業種に的を絞ります。エンゲージメント対象企業は、今後選定を進めます。
ワールドカップ・カタール大会のスタジアム建設現場において、最大6,500人の移民労働者が死亡したとされる事例は、過酷な労働条件、自由の欠如による離職の阻害、健康管理体制の不備等の状況に対する労働者の脆弱性を浮き彫りにしています。
企業責任を果たす
当テーマを担当するエンゲージメント・スペシャリストの藤田 裕美は、次のように述べています。「エンゲージメントを通じて投資先企業に人権尊重を求めることは、投資家の明確な義務であり、また企業が将来直面する可能性のあるリスクを特定し低減する機会にもなります。」
「世界中の規制当局が、人権に対する企業責任や投資家が抱えるESGリスクをより重要視しようという大きな動きの一環として、現代版奴隷制や強制労働のリスクを注視する姿勢を強めています。」
「ロベコはエンゲージメントを通じて、企業のサプライチェーンと労働慣行の可視性を高めることを目指し、責任ある調達と人権デューデリジェンスのプロセスを組み込むよう求めます。また、投資先企業が、継続的にサプライヤーやステークホルダーのモニタリングを行い、これらと協力して是正措置や改善策を講じることを期待しています。」
公正な移行(Just Transition)
公正な移行(Just Transition)のテーマでは、低炭素経済への移行、とりわけ化石燃料からの脱却に付随する社会的コストの軽減を目指します。この用語を初めに用いたのはEUです。再生可能エネルギーへの移行によって炭鉱等の労働者が恒久的に職を失う事態を避けることが狙いでした。当エンゲージメントでは、影響を受ける全当事者にとって可能な限り公正かつ包摂的な形で、経済のグリーン化を進めることに重点を置いています。
ポートフォリオ・マネジャーが公正な移行に関連する要因を投資プロセスに組み入れる作業を進めるのと並行して、エンゲージメント・スペシャリストは、ロベコSAMネットゼロ2050気候株式戦略の運用チームと緊密に連携し、公正な移行の実践状況を評価するための枠組みを構築していく予定です。
公正な移行という概念は確立されたものではありませんが、ロベコのエンゲージメントにおいては、まずはエネルギー、公益事業、鉱業、製造業、建設など、ネットゼロへの移行の影響を直接的に受ける業種に注力する方針です。
貧困の解消
エンゲージメント・スペシャリストのGhislaine Nadaud は、次のように述べています。「移行に伴う問題が最も切実なのはアフリカやアジアをはじめとする新興国市場です。豊かさが増し、都市化が急速に進む一方で、貧困の撲滅が喫緊の課題となっています。」
「投資家を含む民間セクターは、公正な移行の実現において中心的な役割を担います。新興国市場における移行を支援するには、先進国市場とは性質、規模、複雑性が異なる配慮が求められます。そのため、当エンゲージメントでは新興国市場に注力することとしました。」
税の透明性
3つめのテーマでは、企業の課税上の地位や、事業展開する国に実際に納める税に関する透明性の改善を目指します。多くの企業が、国内拠点以外の法域でさまざまな納税回避の手法を利用することにより、収益に対する納税額が過少になっていると批判を受けています。
このテーマでは、国別に税務申告を分析することが重要になります。EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の施行など、規制の整備が進む結果、企業と投資家の双方に、税の透明性向上が求められるようになっています。規制の強化などを通じて、企業が社会全体に与える影響の開示を注視する動きが強まる中で、これは特に時宜を得たテーマであると考えられます。
ガバナンス・スペシャリストのMichiel van Esch は、次のように述べています。「税の問題は、伝統的な財務分析に関わるトピックという印象があるためか、ESG課題としては見過ごされがちです。しかしながら、投資家が社会全体にインパクトをもたらそうとするなら、優れた教育、医療、インフラへの投資を模索する政府から利益を奪う企業がもたらす負の影響についても、認識する必要があります。」
長期的な取り組み:気候変動と生物多様性
上記の3つのテーマに加えて、長期的な戦略的重要性に鑑み、2つの広範なエンゲージメント・テーマを常設することになりました。
気候変動に立ち向かうには、高排出企業とその資金源である金融機関の双方に対するエンゲージメントが必要になります。当エンゲージメントは、国際的な合意に則して2050年までに排出量ネットゼロを実現するというロベコの中核的なコミットメントや、複数の気候特化型運用戦略の立ち上げなど、ロベコの既存の取り組みを発展拡大させるものです。
生物多様性に関するエンゲージメントは2020年に開始しました。当初は、高リスクのコモディティを取り扱う企業による森林破壊に注力していました。その後、汚染や乱獲など、生物多様性喪失を引き起こす他の要因にも対応するため、期間と範囲の両観点からエンゲージメント・プログラムを拡充しています。
影響力
サステナブル投資
Nature Action 100の創設
モントリオールで開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、Nature Action 100が創設されました。ロベコは、生物多様性に関する国際的な協働エンゲージメント・プログラムの構築に貢献してきました。2023年には、実際にエンゲージメントを開始する予定です。
ロベコのエンゲージメント・シニア・マネジャーであるPeter van der Werf は、次のように述べています。「COP15で議論されたグローバル生物多様性枠組(GBF)は、投資家にとって、生物多様性のシステム上重要となる企業に対する協働エンゲージメントを開始するための、盤石な基盤となります。」
「枠組の行動ターゲット15は、国際的企業に対して、生物多様性喪失の影響、依存度、リスク、機会に関する開示を改善するよう求めています。これは、企業行動を改善する重要な推進力になると見られます。」
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