Robeco, The Investments Engineers
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04-01-2024 · インサイト

2024年は海洋生物と有害化学物質が重要なエンゲージメント・テーマに

高排出企業への対応や持続可能なファッション業界への移行促進というテーマに加え、海洋生物多様性と有害化学物質の問題を新たなエンゲージメント・テーマとして設定します。

    執筆者

  • Peter van der Werf - エンゲージメント シニア・マネジャー

    Peter van der Werf

    エンゲージメント シニア・マネジャー

ロベコは2024年に注力する最新のエンゲージメント・テーマとして、お客様との協議を踏まえ、これらのテーマを選定しました。通常の新規エンゲージメント・テーマ同様、海洋生物多様性と有害化学物質に関するエンゲージメントは、投資先企業の中から選定された企業との間で3年間にわたり実施します。

加えて、排出量ネットゼロへの移行で後れを取る高排出企業に対するエンハンスト・エンゲージメントをさらに強化します。対象企業は、2026年までにロベコが求める気候関連の最低基準を満たさなければ、投資対象から除外されるリスクを負うことになります。

一方、2023年10月にファッション業界を投資対象とする運用戦略の設定と共に開始した同業界とのエンゲージメントは、年内に丸1年を迎えます。ロベコの運用戦略の中でも、サステナビリティ向上のために全投資先企業とエンゲージメントを行うことを前提に組入銘柄を選定する運用戦略は2本のみであり、当戦略はその1つです。

新たな機会の大海原

海洋生物多様性のテーマでは、海洋生物に重大な影響を及ぼす、養殖業や漁業などの企業(6社程度)とのエンゲージメントに取り組みます。乱獲と海洋環境の汚染は、生物多様性喪失の5つの主要因に含まれます。

ロベコの生物多様性関連エンゲージメントを取り纏めるサステナブル投資スペシャリストのLaura Boschは、次のように述べています。「海洋生物多様性は、生物多様性という包括的なテーマの中でも、ロベコがこれまでそれほど注力してこなかった分野です。」

「これまでは、森林破壊の問題やNature Action 100との協働に、より注力してきました。Nature Action 100では、陸地や土地利用の変化に重点を置いており、海洋の問題に対する注目は限定的でした。当テーマでは養殖業や漁業関連の上場企業にフォーカスし、初めて深海採鉱にも注目します。」

海底から貴重な鉱物を掘り出す深海採鉱は論争の的となる分野であり、海洋生物に対する脅威や公害の懸念が指摘されています。当エンゲージメントの大部分は、2023年9月にスタートしたNature Action 100との協働で行う予定です。最初のステップとして、この分野に含まれる可能性の高い100社に対して、投資家の期待を記した書簡を送付します。

新規化学物質が焦点

有害化学物質のテーマにおいても、6社程度の企業を対象とします。なかでも、数千年にもわたって有毒性が持続するため「永久に残る化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物(PFAS)の段階的な使用廃止を目指します。普及が大きく進んだために、プラネタリー・バウンダリーの概念において、「新規化学物質」は2023年に限界値を大幅に超過しました(下図参照)。

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新規化学物質はプラネタリー・バウンダリーの限界値を超過した6項目の1つ。 出所:Science Advances 1

化学業界を担当するシニア・エンゲージメント・スペシャリストのSylvia van Waveren は、次のように述べています。「プラネタリー・バウンダリーの概念において、海洋生物多様性と有害化学物質はいずれも安全圏を大きく超えています。」 「有害化学物質のテーマは、スウェーデンのNGOで投資家に関連リサーチを提供するChemSecと協働でエンゲージメント2 を行います。先頃、ChemSecが対象とする54社宛ての、有害化学物質の段階的な使用廃止に関する書簡に署名しました。2024年は、海洋生物多様性テーマ同様、特に重要な6社とのエンゲージメントに優先的に取り組みます。」

「使用後何十年にもわたって生態系に大きな被害を及ぼす可能性のあるPFASのような物質の使用を、段階的に廃止することが肝要です。製造企業は、通常の化学製品や農薬、また、化学業界のさまざまな分野において、これらを有害性の低い化学物質で代替していく必要があります。」

赤信号が点滅

現行の気候関連テーマ「パリ協定の加速化」を継続し、2024年はパリ協定の気温目標達成を目指すビジネスモデルへの移行の加速に、より重点を置きます。42社に対して達成すべき最低基準を設定し、その期限を、先進国の企業は2026年、新興国の企業は2028年とします。

ロベコで気候関連エンゲージメントの調整役を務めるシニア・エンゲージメント・スペシャリストのCristina Cedilloは、次のように述べています。「より強化された気候関連テーマにおいては、グリーン、ライトグリーン、黄色、赤から成る段階別評価(信号)システムを用いて、脱炭素化の進捗状況を評価します。」

「信号システムの対象146社の中で、ロベコの最低基準を明らかに下回るのは赤信号に分類される42社であり、そのうち20%程度をエンハンスト・エンゲージメント・プログラム『パリ協定の加速化』の対象として選定しました。」

「最低基準の1つは、スコープ1と2の排出量データを公表したうえで排出削減目標を設定することです。これは炭素集約型セクターにおいては極めて重要です。」
「さらに、石油ガス会社に対しては、現時点では実現していませんが、メタンガスの排出目標を設定するよう求めていきます。また、石炭火力発電所を新設しない方針へのコミットも求めていきます。これらの基準は全てエンハンスト・エンゲージメント・プログラムに組み込まれ、エンゲージメントの成果が見られないと判断した場合には、投資対象から除外する可能性があります。」

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ファッション業界に徹底して注力

2023年には、ファッション業界に注目したロベコ独自のファッション・エンゲージメント株式戦略の運用開始に伴い、当戦略独自のエンゲージメント・テーマを設定し、当戦略のアナリスト・チームがこれを担うこととなりました。繊維産業で働く数百万人もの低賃金労働者は、危険な労働環境や労働者権利の脆弱性といった問題にさらされていることから、これまでは、より広範な人権問題テーマの一環としてファッション業界への働き掛けを行ってきました。

ロベコでは、ロベコのサステナブル投資戦略に投資し、投資先企業とのエンゲージメントをロベコに任せているお客様と徹底した協議を行い、これを踏まえてエンゲージメント・テーマを選定します。エンゲージメント責任者であるPeter van der Werf は、次のように述べています。 「お客様の声に耳を傾け、それを受けてアプローチを修正しました。」

「いずれのお客様も、エンゲージメントの最重要テーマとして気候変動問題を挙げています。そのため、この中核的エンゲージメント・テーマと関連トピックにより多くの資源を配分することとしました。これまでは、特定の企業ピアグループを深掘りし、エンゲージメント・テーマを設定し、集中的にエンゲージメントを行い、一定期間後に当該テーマのエンゲージメントを一斉に終了していました。今後は、投資リサーチやサステナビリティ・リサーチを通じてエンゲージメントの必要性が指摘された場合、その都度、対象企業を随時追加していく方針です。」

「今後も、気候、生物多様性、人権、ガバナンスという『常設』テーマへのエンゲージメントを続けていきます。いずれも継続的な取り組みとなりますが、投資先企業に差し迫った問題となる箇所に集中的に取り組む方針です。」

重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。 ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。 運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。 当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。 商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号 加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会