Robeco, The Investments Engineers
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11-02-2022 · インサイト

投資のインパクト計測という課題に挑む

企業が世界にもたらすインパクトを定量化するプロセスを、ロベコはさらに進化させました。具体例として、新しいインパクト計測のフレームワークをSDGクレジット戦略に適用します。

    執筆者

  • Jan Anton van Zanten - SDGストラテジスト

    Jan Anton van Zanten

    SDGストラテジスト

  • Paul Ruijs - Impact Specialist

    Paul Ruijs

    Impact Specialist

インパクト投資を行う投資家は、自らの行動が計測可能であることを望んでいます。しかしながら、企業が社会や地球にもたらした影響を評価するための標準化されたデータがないことなどから、インパクトの計測には依然として複雑な作業が伴います。ロベコが独自のSDG投資フレームワークを開発したことは、インパクトを考慮に入れる普遍的な投資手法を確立するプロセスにおいて、重要な一歩となりました。ロベコは今般、ポートフォリオ構成銘柄がSDGsにもたらす貢献度をより正確に定量化するフレームワークを構築し、このプロセスをさらに一歩先に進めました。その結果、ロベコとロベコのお客様は、人と地球に具体的なプラスのインパクトを与える企業に資本を振り向けることが可能となります。具体例として、このフレームワークをSDGクレジット戦略の1つに適用します。

SDG投資フレームワークをさらに進化

ロベコは2019年以降、独自のSDGフレームワークを一連のインパクト・クレジット戦略に適用してきました。これは、主要なSDGsのターゲットに対する取り組み実績に基づいて、企業を体系的に評価する頑強なツールです。企業には自社の事業に関連する各SDGについて、「-3」から「+3」までのスコアが付与されます。その後、個々のSDGスコアは単一の全体スコアに集約されます。このスコアは、企業がSDGsにプラスのインパクトを与えているかどうか、また、同社の事業活動によって、どのSDGsが好影響もしくは悪影響を受けているのかを示します。

もっとも、SDGスコアはSDGs に特化した運用戦略を開発するには有益ですが、企業が生み出す具体的な変化の定量化にはつながっていません。例えば、ある製薬企業が死亡率や罹患率を押し下げるのに役立つ適切で安全な薬を製造していることから、当該企業に「ポジティブ・中」の貢献度を表わす「+2」のSDGスコアを付与することはあり得ます。次の課題は、同社の医薬品を利用することができた患者数の定量化です。

正確で一貫性のある計測フレームワーク

これを実現するため、ロベコでは、簡潔で一貫性があり比較可能な方法で、関連SDGsに企業がもたらすプラスの貢献度を定量化するフレームワークを開発しました。このフレームワークは、SDGsの公式ターゲットと指標に連動する指標で構成されます。SDGスコアが「ポジティブ」である保有銘柄について、まず企業全体の貢献度を計測したうえで、全インパクトのうちの一部をロベコの投資に帰属させます。その際、企業価値全体に対するロベコの保有額の価値に基づいて算出します。インパクト創出企業に配分した資金の額を基に、インパクト全体のうちロベコの投資に帰属させるのが妥当なエクスポージャーのみを表示します。次に、その結果を合算します。投資額1億ユーロ当たりのインパクトとして算出することにより、大小異なる規模のファンド間での比較も可能にします。

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SDGクレジット戦略にインパクト計測フレームワークを適用

以下では、具体例として、このフレームワークをロベコSAMグローバルSDGクレジット戦略に適用します。この運用戦略では、SDGs に対するインパクトが中立的またはポジティブである(すなわち、SDGスコアが0以上である)世界中の企業が発行する社債に投資しています。個別発行体のインパクトがポートフォリオ全体で合算され、同戦略に 1億ユーロ投資した場合の数字が提示されます。詳細は図表1で示した通りです。

前提条件を明確化するため、以下の点について特に記載しておきます。

  • 「インパクト計測」という用語は、企業がSDGsにもたらす貢献度を特定する試みを示すため、厳密でない広義の意味で用いています。企業によるアウトプットや社会的な成果などの形で表現される可能性があります。

  • 報告されるインパクト指標は発行体の製品が生み出すインパクトを示すものであり、製造プロセスにおける環境フットプリントは反映されていません。企業の環境フットプリントについては別途報告しています。

  • SDGスコアが「ポジティブ」である企業のインパクトのみを計測しています。ロベコSAMグローバルSDGクレジット戦略の場合、2021年6月30日時点でポートフォリオの市場価値の81%に相当します。ただし、SDGスコアが「ポジティブ」である全ての企業がインパクトを公表しているわけではなく、また、インパクトを公表している企業であっても、必ずしもロベコのフレームワークと完全に整合的な形で報告しているとは限りません。そのような企業は分析の対象から除外されます。その結果、報告した指標に含まれているのはポートフォリオ構成銘柄のうち77銘柄であり、2021年6月30日時点の市場価値の55%に相当します。

  • 企業がインパクトに関する関連情報を提供している場合でも、データを有益な指標に変換するために、追加的な計算が必要になることがあります。このため、公表するインパクト指標には推計と誤差が含まれます。加えて、ポートフォリオの構成銘柄である複数の企業が同じ成果に関与していることも考えられるため(同一報告年度中に同じ患者に医療を提供した場合など)、全個別企業のインパクトを合算することにより、公表する指標に二重計上が含まれる可能性があります。

  • 本戦略における投資とインパクト指標との間に因果関係はありません。例えば、ポートフォリオにおいて特定の発行体に対するエクスポージャーを増やすことは、当該発行体によるプラスのインパクトが増加することを示唆するものではありません。


図表 1 | 投資のインパクト計測 - ロベコグローバルSDGクレジット戦略に1億ユーロ投資した場合に、1年間にもたらされる効果:

図表 1 | 投資のインパクト計測 - ロベコグローバルSDGクレジット戦略に1億ユーロ投資した場合に、1年間にもたらされる効果:

出所: ロベコ。上記の意見および解釈はロベコのものであり、国際連合のものではありません。2021年6月30日時点。

フレームワークの考察: 何を計測するべきか

一般に投資家は、投資先企業のサステナビリティ慣行について評価する際に、データが入手しやすいという理由などから、製造に伴う環境フットプリントなど、事業活動のインパクトに主に注目します。このアプローチでは、環境や社会に甚大な影響を及ぼすことなく製品やサービスを提供する企業を特定することが可能になります。

その一方で、製品とサービス自体のインパクトについては、企業が生み出すインパクトの中核を占めるにもかかわらず、評価する投資家はほとんどいません。こうした活動においては、既存のビジネスモデルを活かして、当該活動から生じるプラスのインパクトを広げていくことが、戦略的重要課題となります1。また、これは企業が付加価値を生み出すことが可能な分野でもあります。

したがって、企業の製品とサービスのインパクトを計測することは、ロベコのアプローチにおける際立った特徴なのです。このアプローチを用いれば、SDGsに独自の大きな貢献をもたらす企業、追加的な資本を用いてプラスのインパクトを拡大する可能性の高い企業を特定することが可能になります。

インパクト計測におけるイノベーションの次の段階について言えば、製品とサービスのインパクト計測からフレームワークの範囲を広げて、事業活動のインパクトを図るのに有意な指標を取り入れることを目指しています。

Footnote

1 「Analyzing companies' interactions with the Sustainable Development Goals through network analysis: Four corporate sustainability imperatives(ネットワーク分析を用いた企業のSDGsとの関連性の分析-4つのコーポレート・サステナビリティの重要課題)」 - Zanten - 2021 - Business Strategy and the Environment - Wiley Online Library

重要事項

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