ロベコでは、コンセンサス・シナリオが実現する確率が高いことを認識する一方で、状況が変化する中でセンチメントのもろさやリスクの偏在にも留意しています。現在のタイトなスプレッド水準とリスクのポジショニングを踏まえると、失望が生じる余地は十分に存在します。
現在、投資適格債と新興国市場のポジショニングを中立的な水準に据え置きつつ、発行体の選別を通じたアルファの創出に注力しています。ハイイールド債に関してはクオリティ重視の姿勢を堅持し、ベータを1未満としています。また、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドの方が社債よりもタイトな水準で取引されているため、今はデリバティブ(CDS)を活用してベータを引き上げるのに最適なタイミングではないと判断しています。
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今はベータを引き上げるのに最適なタイミングではないと判断しています。
ファンダメンタルズ
ロベコでは、1つの基本シナリオに沿ってポジションを構築するのではなく、複数の経済シナリオを検討することが極めて重要であると考えています。この1年間に、米国経済に関する市場のコンセンサスは、ハードランディング、ソフトランディング、ノーランディングという3つの主要なシナリオの間で変遷してきました。2023年の初頭には、市場のコンセンサスは米国経済の景気後退入りでした。その後、夏場にソフトランディング(軟着陸)へシフトし、10月にはノーランディング(長期的な金利の高止まり)がコンセンサスとなりました。2023年末には、センチメントはソフトランディング・シナリオに回帰し、現在まで市場の支配的な見方となっています。
米国以外に目を向けると、世界情勢はまったく異なる様相を呈しています。中国では、住宅市場の落ち込みが引き続きセンチメントを冷え込ませており、脆弱性が依然として際立ちます。失業率は上昇傾向にあり、デフレ圧力が残存しています。この流れを反転させようとする政策当局の取り組みにもかかわらず、マネーの伸びが再び鈍化するなど、問題の解決が見えてきません。
昨年は欧州でも経済の停滞が続きました。主な要因としては、金融政策の伝達速度の速まったこと、エネルギー価格が上昇したこと、財政出動が減少したこと、中国情勢への感応度が高まったこと等が挙げられます。ドイツ製造業の状況は特に深刻であり、景気低迷の矢面に立たされています。より広範なマクロ見通しについては、ロベコ・グローバル・マクロ・チームが執筆した四半期アウトルック「リスクオンの地合いながらリスクは残存」をご参照ください。
バリュエーション
それでは、バリューは残存しているのでしょうか。スプレッドの水準は非常にタイトですが、ユーロ建ての投資適格債と金融債には、他の市場と比べて相応の投資妙味が存在すると見ています。金融債のスプレッドは絶対ベースでは大幅に縮小しているものの、事業債対比では依然として割安感が存在します。世界金融危機以降、金融機関の自己資本比率、流動性、資金調達の状況は改善しているため、金融債に投資すべき長期的な命題は不変であると考えます。このほか、SSA債(ソブリン債、国際機関債および政府系機関債)のセグメントにもバリューが残存しています。SSA債はスワップ・スプレッドが縮小する中でも魅力的な水準で取引され、スワップ対比のスプレッドはむしろ拡大しています。
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金融債に投資すべき長期的な命題は不変であると考えます。
テクニカル
クレジット戦略に機関投資家と個人投資家の資金が大量に流入することからも明らかなように、クレジットに対する需要は底堅く推移しています。ロベコはこの傾向を直接確認する一方で、固定満期型の商品への資金流入が継続しているという声も耳にしています。さらに、企業年金基金向けに多額の年金キャッシュフローを提供する保険会社からは、長期年限のクレジットに対する需要が存在します。投資適格債市場にはこのような底堅い需要に見合った供給が存在するため、欧米両地域において、同市場は拡大しています。
これとは対照的に、ハイイールド債市場は、格上げされた企業のユニバースからの離脱や、公開市場外でリファイナンスを行う動きを背景に、市場規模は縮小傾向にあります。このような需給ギャップは、ハイ イールド債がアウトパフォームする一因となっています。新興国の外貨建債券市場も同様の状況であり、企業が現地通貨建て市場をはじめとする代替の資金調達手段を模索する中で、市場は縮小傾向にあります。
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投資適格債市場には底堅い需要に見合った供給が存在します。
クレジットに対する旺盛な需要は、新発債市場におけるプライシングのダイナミクスにも反映されています。発行体は新発プレミアムをほとんど上乗せしない水準で発行することができる一方、オーダーブックが数倍の超過需要になることも珍しくありません。また、中央銀行の金融政策が市場のテクニカルに大きな影響を与えることもあります。バランスシートの縮小は進行中ですが、FRBとECBは引き続き大量の債券型商品をバランスシート上に抱えています。クレジットにとって最もネガティブなシナリオは、利下げが予想通りに実施されないことであり、インフレが再び上昇に転じれば、そのような可能性も否定できません。
結論
利下げの可能性が高い環境にある限り、金融政策によるテクニカル面での下支え効果は引き続き期待できると見ています。しかしながら、初回の利下げ後に、スプレッド縮小の流れが再来すると予想するべきではありません。ヒストリカル・データからは、ソフトランディングの環境においても、通常、初回の利下げ後にスプレッドがさらに縮小することはありません。
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