この発表は、ルペン氏率いる極右政党に政権の座を与えかねない、危険な賭けであると捉えられました。これまでのところ、ボラティリティの上昇が目立つのはフランスの銀行債とソブリン債の市場であり、市場の主な懸念は「Frexit(フランスのEU離脱)」よりも、すでに限界に近づきつつある政府債務指標をさらに悪化させかねない財政拡大の可能性に注目が集まっているようです。
本稿の執筆時点において、選挙の最終的な結果は確定していませんが、今回の出来事は、予期せぬイベントがボラティリティの大幅な上昇要因になりうることを、タイムリーに示しています。バリュエーションが割高な水準に達し、市場のコンセンサスが一方向に傾斜しているタイミングにおいて、影響が特に大きくなることは明白です。
現在、投資適格債と新興国市場のポジショニングをより中立的な水準に据え置きつつ、発行体の選別を通じたアルファの創出に注力しています。ハイイールド債に関してはクオリティ重視の姿勢を堅持し、ベータをベンチマーク未満としています(グローバル・マクロ・チームによるアウトルックをご参照ください)。
ファンダメンタルズ
米国の経済指標は、引き続き景気の底堅さを示しています。実際に、ほとんどの評論家は、ここ数年間の急激な利上げサイクルの影響によって、米国経済はいずれ破綻を避けられないという見方を撤回しています。経済成長の鈍化、インフレの沈静化、近い将来の利下げ見通しという「ゴルディロックス」シナリオが、引き続き市場全体のコンセンサスとなっています。このシナリオ通りの展開となれば、ファンダメンタルズの観点から、債券投資(金利およびクレジット)は強力な追い風を受けると予想されます。
欧州における議論はさらに複雑であり、6月初め、初回の利下げが正式に実施されましたが、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、今後の政策は経済指標に依拠する(data dependent)というスタンスを強調しました。年初来、経済成長見通しは改善傾向にあり、消費者信頼感も目に見えて上向いているものの、最近の政治的混乱(および進行中の地政学的混乱)によって、将来の見通しに関する不透明感が増しています。
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企業のファンダメンタルズには、全般に底堅さが見受けられます。
企業のファンダメンタルズには、全般に底堅さが見受けられます。投資適格債市場では、パンデミック後に超低利回りで積極的に償還期限を延長したことで、当然ながら、多くの発行体には金利上昇の影響が及んでいません。また、投資適格債、ハイイールド債のいずれの市場においても、財務レバレッジは最近の低い水準から小幅に上昇しているものの、大きな懸念材料とは見なされていません。同様に、インタレスト・カバレッジ・レシオは低下したとは言え、健全な水準を維持しています。全体として、利益率と流動性は堅調に推移しています。ハイイールド債市場では、最近数四半期にわたってデフォルト率が上昇しているものの、比較的低い水準にとどまり、また、償還スケジュールに関しても、少なくとも来年末までは問題ないように思われます。一部の企業にとっては、負債コストの上昇が痛手となる可能性もありますが、それが財務レバレッジ削減の強力な誘因になるとも考えられます。
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バリュエーション
ロベコはクレジット投資家として市場のバリュエーションを評価する際に、指標として、主にクレジット・スプレッドを分析します。過去20年間のデータからは、現在の米ドル建て投資適格債のスプレッドが非常にタイトであるという印象を受けます。なかでも資本財セクターのスプレッドは、4パーセンタイル程度の水準に達しています。これに対してユーロ建て投資適格債の場合、現在のスプレッドは過去20年間の50パーセンタイル近辺の水準であり、それほどの割高感はありません。いずれの市場においても、金融債の相対価値は非金融債と比べて魅力的であるように思われます。
ハイイールド債市場の構図も同様であり、米ドル建て債にはユーロ建て債と比べて割高感が存在します。もっとも、ユーロ建て債のスプレッド水準は23パーセンタイル近辺であり、単独でバリューを見出すのは難しい状況です。特筆すべき例外は、より多くのディストレスト銘柄が含まれるCCC格ですが、その多くの銘柄について、リターンが実現しない可能性が高いことから「幻の利回り/スプレッド」という表現をロベコは用いています。
テクニカル
クレジット市場では、2023年10~12月期の段階において、2024年以降の大規模な利下げの見通しが歓迎され、同時に景気後退入りの懸念が和らいだように思われました。しかしながら、年初来の特徴的な動きとして、そのような見通しは金融緩和のタイミングと規模の点において後退する形となりました。
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クレジットに対する需要は、なぜこのように底堅さを維持しているのでしょうか。
したがって、「長期的な金利の高止まり(higher-for-longer)」というシナリオの実現確率が高まる中で、クレジット・スプレッドが縮小を続けていることは、いくぶん直感に反するように思われます。それでは、クレジットに対する需要は、スプレッドが縮小し供給が過剰になる中でも、なぜこのように底堅さを維持しているのでしょうか。
カギを握るのは「オールイン利回り(債券全体としての利回り)」であり、多くの投資家にとって、スプレッドの重要性は二次的なものであると考えられます。
すでに詳述したように、現在のクレジット・スプレッドの水準は、決して割安とは言えません。その一方で、「オールイン利回り」に注目すると状況は一変し、過去10年間のデータに基づくと、世界のほとんどのクレジット市場では、足元で80パーセンタイルを超える水準で推移しています。
常にテクニカル要因を理解し、尊重しなければなりませんが、経験上、テクニカル要因は急激に変化することがあります。需給のバランスが崩れると、スプレッドはファンダメンタルズが示唆するもより大幅に、割高/割安になることもあり、また、その状況が長期化することもあります。
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