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25-09-2024 · 四半期アウトルック

クレジット・アウトルック:FRBの勝利

FRBは大幅な利下げ(50bp)を決定し、インフレとの戦いに勝利宣言をしましたが、労働市場は弱含み、失敗の許容範囲は狭いままです。ソフトランディングが市場のコンセンサスですが、現在はポートフォリオのベータを引き上げるタイミングではないと考えています。

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    執筆者

  • Sander Bus - CIO High Yield, Portfolio Manager

    Sander Bus

    CIO High Yield, Portfolio Manager

  • Reinout Schapers - Portfolio Manager

    Reinout Schapers

    Portfolio Manager

  • Matthew Jackson - Portfolio Manager

    Matthew Jackson

    Portfolio Manager

賽は投げられました。FRBは大幅な利下げ(50bp)を決定し、インフレとの戦いに公式な勝利宣言をしました。今回の利下げを通じ、金融政策の引き締めによって経済に過度なダメージが生じることがないように、「市場の先を行く(ahead of the curve)」意向を表明したことになります。前四半期に労働市場がさらに弱含んだことに加えて、先行指標は米国経済の減速を示しています。

FRBは、失業率の急増を回避し労働市場のバランスをとることで、首尾良くソフトランディングを実現するというのが市場全体のコンセンサスであり、ロベコも同じ意見ですが、一方で、現在はポートフォリオのベータを引き上げるタイミングではないと考えています。失敗の許容範囲は狭く、8月初旬に経験したように、コンセンサスがわずかでも反対方向に振れた場合、市場は急激に転換する可能性があります。

ファンダメンタルズ

かなり前から、米国経済は一連の利上げに対して強靱性を発揮すると見られてきました。拡張的な財政政策、豊富な固定金利型の企業借り入れの存在、パンデミック後の繰り延べ需要といった、お馴染みの要因がすべて影響しました。利上げサイクルの終了に向けて、市場は景気後退入りが回避されるとの確信を深めるようになりました。その後、7月の失業率の発表を受けて「サーム・ルール」への該当に注目が集まり、一時的に不確実性が高まったものの、市場はFRBが使命を果たすと確信していたようであり、リスク資産の下落は短期間にとどまりました。

ロベコは引き続き、労働市場が自己増幅的な下降スパイラルの引き金になるような段階まで悪化していないかどうか、注視していく方針です。基本的にそのようなシナリオを想定していませんが、市場が現在ほとんど織り込んでいないリスクシナリオではあります。

中国経済の停滞は、これまで世界の金融市場にほとんど影響を与えてきませんでした。

クレジット市場を概観すると、投資適格企業には良好なトレンドが見受けられます。収益性の改善を受けて、財務レバレッジ(負債/EBITDA)は低下傾向にあります。より高い金利での債務の借り換えが進む過程で、利払い負担が増加しているため、インタレスト・カバレッジ・レシオは悪化傾向にあるものの、ほとんどの投資適格企業にとっては大きな問題に発展していません。これに対して、ハイイールド債市場では二極化の傾向が一段と強まっています。相対的に格付けの高い企業が債務を減らす能力と意思を示している一方で、信用力が脆弱な企業は困難に直面しています。後者の企業はリストラクチャリング(債務再編)を通じて債務の削減を余儀なくされる公算が大きく、債権者は元本の部分的な償却を強いられる可能性があります。

より広範なマクロ見通しについては、ロベコ・グローバル・マクロ・チームが執筆した四半期アウトルック「シーズン・フィナーレ~年末に向けてスリリングな展開に」をご参照ください。

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バリュエーション

ロベコはクレジット投資家として市場のバリュエーションを評価する際に、最も重視する指標は主にクレジット・スプレッドです。過去20年間のデータからは、クレジット市場のあらゆるセクターのスプレッドが比較的タイトであり、なかでも米ドル建て投資適格債のスプレッドが際立ってタイトであるという印象を受けます。これに対してユーロ建て投資適格債の場合、足元でスプレッドが過去20年間の中央値よりややタイトな水準で推移するなど、米ドル建てと比べて割安感が存在します。米ドル建て投資適格債市場では、特に長期年限が割高な状況です。また、欧米いずれの市場においても、A格とBBB格のスプレッド格差は過去最低に近い水準まで縮小しています。このような市場環境において、個別発行体の厳格な選別が非常に重要であると認識しつつ、クオリティ重視の姿勢を堅持しています。また、金融債はこれまで非金融債をアウトパフォームしてきましたが、その傾向がさらに続く余地があると見ています。

テクニカル

年初来、テクニカルがクレジット投資のパフォーマンスの主要な決定要因であったことは明らかです。投資適格債の戦略には、クレジットに対する旺盛な需要を背景に、大量の資金が流入してきました。その主な要因の1つは魅力的なオールイン利回りの水準であり、米国における年金関連商品への高い需要が喚起されました。また、(退職金の長期運用を行う)ターゲット・デート・ファンドからの大幅な資金流入も見受けられました。これに対して、ハイイールド商品への需要は比較的低調だったものの、同市場では堅調なテクニカルが追い風となりました。

テクニカルは依然として堅調ですが、慎重な姿勢が求められます。

ハイイールド債市場では比較的落ち着いた状態が続いていますが、中央銀行による利下げの開始を受けて、利回り追求型の投資家にとってレバレッジド・ローン市場の魅力が低下し、レバレッジド・ローンからハイイールド債への資金シフトが生じることも考えられます。また、供給面ではハイイールド債市場ががより活発になると予想しています。オールイン利回りの低下に伴い、プライベート・エクイティのスポンサーがレバレッジド・バイアウト(LBO)案件に取り組むインセンティブが高まり、案件のファイナンスを目的としてハイイールド債市場に参入する動きが生じる可能性が高まると思われます。

要約すると、テクニカルは依然として堅調ですが、慎重な姿勢が求められます。歴史的な傾向に鑑みると、8月初旬にも確認されたように、テクニカル要因は急激に反転する可能性があります。

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重要事項

当資料は情報提供を目的として、Robeco Institutional Asset Management B.V.が作成した英文資料、もしくはその英文資料をロベコ・ジャパン株式会社が翻訳したものです。資料中の個別の金融商品の売買の勧誘や推奨等を目的とするものではありません。記載された情報は十分信頼できるものであると考えておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。意見や見通しはあくまで作成日における弊社の判断に基づくものであり、今後予告なしに変更されることがあります。運用状況、市場動向、意見等は、過去の一時点あるいは過去の一定期間についてのものであり、過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。また、記載された投資方針・戦略等は全ての投資家の皆様に適合するとは限りません。当資料は法律、税務、会計面での助言の提供を意図するものではありません。 ご契約に際しては、必要に応じ専門家にご相談の上、最終的なご判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。 運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動の影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、投資元本を上回る損失を被ることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料において記載せず別途ご提示させて頂く場合があります。具体的な手数料または報酬の金額・計算方法につきましては弊社担当者へお問合せください。 当資料及び記載されている情報、商品に関する権利は弊社に帰属します。したがって、弊社の書面による同意なくしてその全部もしくは一部を複製またはその他の方法で配布することはご遠慮ください。 商号等: ロベコ・ジャパン株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2780号 加入協会: 一般社団法人 日本投資顧問業協会